オランド大統領、国賓として来日 Visite d’État au Japon du Président François Hollande

フランスのフランソワ・オランド(François Hollande)大統領(58)とパートナーのヴァレリー・トリエルヴェレール(Valérie Trierweiler)さん(48)が、6月6日(木)から8日(土)まで国賓として来日されました。フランス大統領の国賓としての来日は、1996年のジャック・シラク(Jacques Chirac)氏以来17年ぶりのことです。オランド氏は7日(金)午前に天皇、皇后両陛下と皇居・宮殿「竹の間」で会見され、その後安倍晋三首相と首相官邸で首脳会議を行い、原発輸出など原子力の分野での協力強化を柱とした共同声明を発表しました。この方は、中国寄りとされた前大統領のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)氏と異なって対日関係も重視されており、日本側としてはフランスとの関係強化を期待しているようです。

ところで、今回の来日で注目が集まったのは、オランド大統領と同伴されたヴァレリーさんとの関係です。このお二人は正式な結婚をしていない“事実婚カップル”で、ヴァレリーさんはフランス史上初の未婚のファーストレディーとして来日されたのです。また、日本側にとっても事実婚のパートナーを国賓として迎えるのは今回が初めてで、そのため日本政府内でも当初この方を正式に結婚した夫人として接遇するかどうかが議論になり、外務省側が関係省庁にこれまでの諸外国の対応などを説明して、最終的に夫人と同じ扱いをするとの結論を出すに至ったのだそうです。

このヴァレリーさんという方は「Paris Match」という情報誌に携わるジャーナリストで、2度の離婚歴があり、3人のお子さんをお持ちです。かつて女性を軽蔑する発言をした男性の同僚を平手打ちにしたという逸話が残っており、非常にきっぱりとした性格の持ち主のようです。この未婚問題について、ご本人は「そこまでの(大きな)ことなのか私には分からない。ローマ法王を訪問する際にはもしかしたら問題になるのかしら ? 率直に言って、私はあまり気にしていない。結婚に関するこの問題は、何より私たちの私生活の一部なのだから」(「AFP通信」)と語っておられたそうです。一方、オランド大統領は、2007年の大統領選挙にも出馬されたセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)さんと約30年間にわたって事実婚関係を続けてこられ、この方との間に4人のお子さんをお持ちなのですが、2007年にこの事実婚関係を解消されて、その後ヴァレリーさんと事実婚関係になっています。

大統領カップルが事実婚であることによって、今後フランスの外交に影響が出るのではないかという見方もあります。特に婚外での男女関係に厳しいイスラム諸国や、インドなどの保守的な国や、ローマ法王庁を公式訪問される際には、問題視される恐れもあるようです。(「AFP通信」) 現に、サルコジ前大統領が2008年にアラブ諸国を訪問された際には、当時はまだ結婚されていなかった恋人で元スーパーモデルのカーラ・ブルーニ(Carla Bruni-Sarkozy)さんを同行させることが出来ず、サルコジ氏は一人で行かざるを得ませんでした。ただ、オランド氏は、昨年5月の大統領就任直後の訪米の際に、すでにヴァレリーさんを同伴させられており、その際にも彼女は未婚のファーストレディーとして紹介されています。このお二人は、上述のヴァレリーさんのご発言の通り、そうしたことは「あまり気にしていない」のでしょうね。

今回来日されたお二人を通じて、フランスが“事実婚”先進国であることが、奇しくも日本で広く知られる形になったように思います。先月にはフランスで同性婚が合法化され、初の同性婚カップルが誕生したことも考え合わせて、結婚のあり方に見られるフランスの“自由さ”が、今後諸外国にどのように評価され、どのように浸透していくのか(あるいは、いかないのか)に注目していきたいと思っています。(2013.6.10-2013.6.14)

カテゴリー: フランコフォニーの手帖 Les cahiers de la Francophonie (par フランス語科教員) タグ: , , パーマリンク