パリ中心部の観光名所として知られるノートルダム大聖堂が、今年2013年に着工850周年を迎えます。そのことを祝って、昨年暮れから様々な記念行事が行われておりますが、その一環として、フランスオルガン協会が5月6日を「世界オルガンの日」に制定し、この日に世界各地の大聖堂や教会やコンサートホールなど850箇所で、24時間にわたる「世界一斉オルガンコンサート」が開催されました。
ノートルダム大聖堂が着工されたのは今から850年前の1163年のことで、この年にローマ法王アレクサンドル3世がパリ司教モリス・ド・シュッツを祝福して、聖母を祭る聖堂の建設を許したのがその起源と言われています。それ以後、何度も増築と改装が繰り返されて今日のような壮大な姿になりました。1991年には「パリのセーヌ河岸」という名称で、周辺の文化遺産とともにユネスコの世界遺産に登録され、今日では巡礼者や観光客を含めて毎年約1400万人が訪れています。
今回の着工850周年の記念行事は、昨年12月13日の盛大な式典で幕を開け、その後各種の展覧会やイベントが行われてきました。主だったものでは、今年の3月に1856年以来使われていた鐘が取り外され、18世紀末に設置されていた鐘に付け替えられて、キリスト教の「聖枝祭」にあたる3月23日にその鐘の音が始めて披露されました。5月6日の「世界一斉オルガンコンサート」は、世界一大きな楽器と言われ、宗教行事などには欠かせない文化遺産であるパイプオルガンの重要性をもっと人々に知ってもらおうとフランスオルガン協会が開催したものです。このコンサートには、フランスの主要都市やヨーロッパの国々はもちろん、南北アメリカやアフリカなど世界5大陸から43か国が参加し、時差を考慮して24時間にわたってオルガンやコーラスや楽器による演奏が行われました。そしてこの日、ノートルダム大聖堂では、夜8時半から深夜1時まで、何人ものオルガン奏者たちがパイプオルガンの演奏を披露しました。アジアからこのコンサートに参加したのは韓国と香港とフィリピンの3か国だけで、日本が参加しなかったのが大変残念です。ただ、この記念行事そのものは今年の11月24日まで続きますので、皆さんも何かの機会に目や耳にされることがあるかもしれませんね。
オルガンは、同じ鍵盤楽器でありながら、ピアノと比べてどうしても地味な印象を拭えない部分があるようですが、教会のミサなどでお腹の底に響くようなパイプオルガンの重低音を聞くと、キリスト教徒でなくても敬虔なすがすがしい気持ちに包まれるものです。あの荘厳な迫力はオルガンならではのものと言えるのではないでしょうか。長い歴史と伝統に裏打ちされたこの楽器の魅力に、私たちはもっと目を向けるべきなのかもしれません。
「世界オルガンの日」の詳細については、例えばこちらをどうぞ。(2013.5.7-2013.5.10)