カンヌ映画祭 2013 Festival de Cannes 2013

第66回カンヌ国際映画祭(公式サイト(日本語)はこちら)が5月16日(木)から26日(日)までフランス南部の都市カンヌで開かれています。カンヌというのは南フランスのコート・ダジュールにある保養地です。この映画祭はこのカンヌで毎年、フランスで最も気候のよい5月に行われます。開催期間中は、メイン会場をはじめ各映画館で映画が上映され、また併設される国際見本市では各制作会社のブースで映画のプレゼンとパーティーが行われます。この映画祭は、ベネチア国際映画祭(毎年8月末~9月初旬)、ベルリン国際映画祭(毎年2月)と併せて、世界3大映画祭の一つに数えられています。もともとは、歴史のあるベネチア国際映画祭で第2次世界大戦中に全体主義の影響が強まったために、フランスがそれに対抗して1946年に国策として始めたものです。

最高賞はトロフィーの形にちなんでパルム・ドール(Palme d’or)と呼ばれます。因みにベネチア国際映画祭の最高賞は金獅子賞(Leone d’Oro)、ベルリン国際映画祭の最高賞は金熊賞(Goldener Bär)です。毎年主要コンペティション部門に残った20本前後の映画作品の中から、このパルム・ドールをはじめ、グランプリ(Grand Prix)、監督賞、男優賞、女優賞、審査員賞などが選ばれます。また、それ以外にもいくつかの部門を持っていて、商業色は比較的薄くて個性の強い作品が並ぶ『ある視点』(Un Certain Regard)部門や、新人監督の作品を集めた『カメラ・ドール』(Caméra d’or)部門などがあります。

審査員は10名近くいて、著名な映画人や文化人によって構成されています。今年のコンペティション部門の審査員長は、『インディ・ジョーンズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』などの作品で日本でもよく知られた米国の映画監督のスティーヴン・スピルバーグさんです。また、日本にとって大変栄誉なことなのですが、今年は日本の映画監督としてはじめて河瀬直美さんが審査員に決まりました。この方は過去にカンヌ映画祭で、『萌の朱雀』(1997年)がカメラ・ドールを受賞し、『殯(もがり)の森』(2007年)がグランプリを受賞していて、カンヌとは大変縁の深い方です。審査員にはその他に、オーストラリアの女優の二コール・キッドマンさんや、台湾ご出身の映画監督のアン・リーさんなどがおられます。

今年は日本映画2作品が2年ぶりにコンペティション部門に出品されました。一つは三池崇史監督の『藁の盾(わらのたて)』という作品(公式サイトはこちら)で、10億円の懸賞金が掛けられた少女殺人犯の移送に命懸けで挑むSPたちの葛藤を描いたアクション大作です。大沢たかおさんと松嶋菜々子さんがSP役として、また藤原竜也さんが凶悪殺人犯役として出演されます。三池監督作品としては、昨年は『愛と誠』がカンヌ映画祭のミッドナイト・スクリーニング部門に出品され、一昨年は『一命』が今回と同じコンペティション部門に出品されており、いずれも残念ながら受賞は逃しましたが、この方のチャレンジ精神は素晴らしいと思います。もう一つは是枝裕和監督の『そして父になる』という作品(公式サイトはこちら)で、6歳の息子が実は出生時に取り違えられた他人の子供だったと知った主人公の葛藤を描いたヒューマン・ドラマです。福山雅治さんが5年ぶりに映画主演を果たされ、初の父親役に挑戦されました。是枝監督作品としては、2004年公開の『誰も知らない』以来およそ9年ぶり3回目のコンペティション部門出品作となります。『誰も知らない』は、当時14歳だった柳楽優弥さんが史上最年少の最優秀男優賞を受賞されたことで大きな話題になりました。今回の授賞式は26日(日)に行われますので、その時には各賞の結果がテレビや新聞を賑わすのではないでしょうか。日本の2作品の健闘にぜひ期待したいと思います。

私は過去に少数ながらカンヌ受賞作品をいくつか見たことがありますが、いずれもハラハラドキドキの手に汗握るようなストーリー展開とは程遠い、単調なまったりとした映画で、途中で思わず眠くなってしまったものもあります。でもきっと、そういった映画にこそ大人にしか解せない人生の深い味わいがあるのでしょうね。私も年齢の上ではすでに人生の後半に入っているのですが、人間的にはまだまだということなのかもしれません。人生で最も多感な時期を過ごしておられる皆さんは、ぜひ様々なジャンルの映画をご覧になって、若い感性で多くのものを吸収なさってください。(2013.5.13-2013.5.17)

カテゴリー: フランコフォニーの手帖 Les cahiers de la Francophonie (par フランス語科教員) タグ: パーマリンク