フランスが同性婚を合法化  Législation du mariage homosexuel en France

フランスのフランソワ・オランド大統領が5月18日(土)、同性カップルによる婚姻と養子縁組を認める法案に署名し、フランスは世界で14番目、ヨーロッパでは7番目の同性婚を認める国になりました。同性婚の合法化は、昨年5月の大統領選におけるオランド氏の公約でしたが、今年の2月12日(火)に下院(国民議会)で可決され、次いで4月12日(金)には上院で、主要部分に修正を加えられることなく可決され、さらに4月23日(火)に法案の通過に必要な第2読会が上院で行われて、ようやく成立の運びとなったのです。ただ、この法案にはかねてよりカトリック教会や保守系野党の反対が根強く、賛成、反対の双方がこの数か月間にわたって激しい政治的論戦を巻き起こしていました。パリやその他の都市では反対派による大規模なデモが繰り返し行われ、デモ隊と警官隊が衝突して暴力行為に発展することもありました。また、サルコジ前大統領率いる右派・国民運動連合(UMP)はこの法案が憲法に反すると主張して違憲審査を申し立てており、これが反対派の最後の砦だったのですが、フランスの司法機関である憲法会議は5月17日(金)に同性婚は「いかなる憲法の精神にも反しない」としてこれを退ける判断を下しました。

この法案の成立を受けて、フランスの中でもリベラルな市として知られる南部のモンペリエMontpellier市では、とある青年同士のカップルが、早速意気揚々と市役所に婚姻届を提出しに行く場面がYou Tubeで配信されていました。ただ、同性婚をめぐるフランスの国論は現在もなお二分しており、5月26日(日)にはパリで再び反対派による大規模な抗議デモが予定されています。また、パリ中心部のノートル・ダム寺院では5月21日(火)に、この法案に反対する意思を表明していた男性作家が、銃で自殺するという痛ましい事件が起こり、抗議のためではないかと囁かれています。

同性婚は、ヨーロッパではカトリック教徒の多いスペイン、ポルトガル、ベルギーなどでも合法化されており、これらの国々では成立の過程で大きな混乱が起こることはありませんでした。それなのに、政教分離の原則を徹底し、寛容の精神を重んじてきたはずのフランスにおいて、何故この問題が国を二分するほど大きな騒動に発展したのでしょうか。注目すべきかと思われるのは、一連の法案反対デモにおいて、保守系野党の支持者に加えて、ごく普通の家族連れが子供を抱いたりベビーカーを押したりしながら行進する姿が見られたことです。彼らは熱心なカトリック教徒で、同性婚が「家族という概念の崩壊をもたらす」としてこの法案に反対しているのです。昨今は日本でも、女性の社会進出や父親の育児参加などによって、家庭における男女の役割が多様化してきていることが話題になりますが、おそらくそれとは全く次元の違う問題として、男女カップルと子供からなる家族構成を侵してはならない聖域として捉える意識がフランス社会には根強く存在しているのかもしれません。こうした考え方は、家族はどうあるべきかを問いかけるものとして、私たちも決して無視はできないと思います。(2013.5.20-2013.5.24)

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カテゴリー: フランコフォニーの手帖 Les cahiers de la Francophonie (par フランス語科教員) タグ: , , パーマリンク