フランス語を話せない人によるフランス語のススメ

佐藤宣之(経済学、名古屋大学大学院経済学研究科教授)(元の記事はこちら

最初にお断りしますが、筆者は元来アカデミックな世界の住人ではなく、霞が関で働く国家公務員。現在は研究休職により名大に在籍します。加えてフランス語のススメが目的なのに、フランス語を自在に操る能力はありません。

大学当時の必修の第2外国語はドイツ語で、自由選択の第3外国語としてフランス語を少々かじった程度。ドイツ語は結構まじめに勉強したので、イギリ ス留学中に訪問したオーストリアの売店で少しドイツ語を使ったら、大部分お世辞とは思いますが、「あなたはウィーン大学の留学生ですか?」と質問されたの を鮮明に覚えています。

当時から英語は万国共通語と言われていましたが、このお世辞にほだされて、やはり可能な限り現地語を使って相手の心に入ろうと考えるようになりました。

さて、筆者は平成18年から21年まで、パリに本部を置くOECD(経済協力開発機構)に派遣され、仕事は基本的に英語ですが、一歩職場を出ればフ ランス語の世界です。幸いOECDはフランス語、英語両方が公用語なので語学研修が充実し、暇を見つけてはフランス語研修に参加しました。動詞の変化の複 雑さ、日本語にはない発音方法等々、皆さんと同じ困難に直面します。

でも驚きました。個々の発音もリエゾンもでたらめなのに、街中で結構通じるのです。パリのメトロの駅で下らないことをボソッと話した際も、となりの フランス人が笑っていて驚きました。以下は個人的経験に基づく推論ですが、フランス人自身も仏文法の勉強で苦労した経験を有するので、間違えることや変な 発音にも寛容で、間違えも想像力で補う習慣があるのでしょうか。フランス人=冷たいは偏見だと思います。

反対に、英文法を基本的に学校で学ばないアメリカ、イギリスでは、きちんと話せないと通じなくて苦労することがあります。留学先のケンブリッジでは、カタカナ英語で「ケンブリッジ」と発しても、正真正銘通じません。

ほんの少しのフランス語の勉強で、フランスでの生活が心豊かになりました。また言い古されていると思いますが、フランス特にパリはファッション、 食、美術等文化の世界的発信起点であり、フランス語を通じてフランスを学ぶことは、私たち一人一人のセンス、発信力、異文化を理解する心を磨いてくれま す。実はパリでは「フランス語で」中国語も勉強したのですが、フランス人と一緒にフランス以外のことに取り組むのは得難い経験でした。

筆者はフランス語を話せませんが、皆様がフランス語の世界に入ることを強くおススメします。

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