同性婚合法化法案への反対デモに10万人 Plus de 100.000 personnes manifestent contre le mariage homosexuel

オランド大統領率いるフランスの現社会党政権が11月7日(水)に同性婚と同性カップルによる養子縁組を合法化する法案を閣議決定しました。同性婚については、フランスでは1999年に当時のシラク政権下で「連帯市民協約」 PACS=Pacte Civil de Solidarité を結ぶという形が容認されていました。これは、18歳以上の2人の個人が共同生活の契約を締結することによって、性別に関わらず結婚した夫婦と同様の税法上の特典などの権利が与えられるという制度です。ただこの制度は、協約を結んだ同性カップルに養子縁組が認められていなかったという点で課題を残したものでした。今回の法案はその課題を克服しようとしたものと言えます。

ところがこの決定を受けて、この法案に反対する野党・国民運動連合 UMP や各宗教団体の呼びかけによって、17日(土)と18日(日)にフランス全土で大規模な反対デモが行われました。17日(土)の参加者数は合計で10万人を超え、都市ごとの内訳ではパリで警察当局によると7万人(主催者側によると20万人)、リヨンでローヌ県庁によると2万2千人(主催者側によると2万7千人)、マルセイユで6千人~8千人だったそうです。

フランスでは決して珍しい光景ではないのですが、今回もパリでは乳母車に乗った赤ん坊からお年寄りまで全ての世代の人たちがこのデモに参加しました。彼らは皆、子供2人と手をつなぐ男女のイラストの描かれたピンク色のTシャツを身に付け、同じイラストの描かれた風船を手に持って、「同性愛には反対しないが、(男女の)結婚を支持!」 « On est mariageophile, pas homophobe ! » といったスローガンが書かれたプラカードを掲げながら、市内を練り歩きました。また、一部の都市では緊迫した場面も見られ、トゥールーズでは数千人規模のデモ隊とそれに反対して集結した数百人規模の同性婚賛成派との間で衝突が起き、それを鎮静化するために治安部隊が催涙ガスを噴射するという一幕がありました。

現オランド政権における女性権利担当相 ministre des Droits des femmes であり政府報道官も兼任する Najat Vallaud-Belkacem ナジャット・バロー=ベルカセム氏は、政府側の見解として同性婚カップルが養子縁組をする権利を擁護しています。彼女は、同性婚は万人にとっての進歩であると述べており、同性愛を「悪癖」であるとする一部の宗教団体の主張は過剰反応であるとして、こうした論争への警戒を呼びかけているのです。

同性婚については、現在日本では認められていませんが、ヨーロッパでは2001年のオランダを皮切りに、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガルなどで次々と制度化されてきました。しかし、フランスでは現段階でまだ正式には認められていません。同性婚が制度化された国では原則として同性カップルによる養子縁組も認められているわけですが、フランスはこれまでそうではなかったのです。やはり、男女カップルと子供という親子関係だけは神聖な部分として残し、現状以上の社会変化を抑えたいという意識がフランス社会には存在していたのかもしれません。そうだとすれば、今回の法案はその伝統に一石を投じるものと言えそうです。

この法案は来年の1月に議会に提出されます。オランド大統領が就任半年で早くも支持率をかなり下げていることもあり、政権運営への影響も含めて、その行方が注目されます。(2012.11.19-2012.11.22)

カテゴリー: フランコフォニーの手帖 Les cahiers de la Francophonie (par フランス語科教員) タグ: , , パーマリンク