今日は11月11日という1並びの日に関する話題をお届けしましょう。この日はフランスでは第一次世界大戦休戦記念日Armistice 1918という祝日です。第一次世界大戦は1918年11月11日にパリ郊外のコンピエーニュCompiègneで結ばれた休戦協定によって軍事行動が停止され、翌1919年のベルサイユ条約によって正式に終結しました。フランスの祝日はキリスト教に関するものがかなり多いのですが、この日は例外的にキリスト教とは関係のない祝日になっています。また、フランスでは1年365日の一日一日に聖人や聖女の名前が付けられていて「聖名祝日(せいめいしゅくじつ)」と呼ばれているのですが、それによると11月11日は聖マルティヌスSaint-Martinの日になっています。それに関連してété de la Saint-Martinという言い方があって、これは11月11日の頃に訪れる夏のような陽気を意味し、日本の「小春日和」に相当する表現です。「聖名祝日」については、日本では2月14日の聖バレンタインSaint-Valentinの日だけが有名ですが、他の日にも全てそれぞれの聖人が決められていて、フランスのカレンダーや手帳や日記帳などにはよくその名前が書かれているのです。そしてフランス人が子供に名前を付ける際にはこうした聖人の名前に拠ることが多いので、フランス人は1年のうちに誕生日の他に自分の名前と同じ聖人の祝日というものがあって、その日を第2の誕生日のように祝うことも多いようです。
ところでこの11月11日は日本では何の日かご存じでしょうか。インターネットで調べるとざっと20以上もあるのですよ。分かりやすいところでは、例えばポッキー&プリッツの日、きりたんぽの日、配線器具の日、下駄の日、煙突の日(いずれも「1111」の形状から)、電池の日(「十一十一」が「プラス・マイナス・プラス・マイナス」に見えることから)、鮭の日(「鮭」という漢字が魚偏に「十一十一」と書くことから)、サッカーの日(サッカーが11人対11人で行うスポーツであることから)などです。(詳しくは例えばこちらを参照してください。) こういった記念日は勝手に作ってよいわけではなく、日本記念日協会というところに登録の申請をしてきちんと認定を受けなければなりません。私は毎朝妻の運転する車に乗せてもらって出勤しているのですが、家を出発してすぐに音楽を聴くためにカーナビのスイッチを入れると、「今日は○月○日○曜日です」に続いて「○○の日です」という音声が流れ、毎日が必ず何かの記念日になっていることに驚かされています。
そんな中の一つとして、11月11日は日本ではチーズの日なのです。これは数字の形状などとは何も関係がなく、史実に基づくものです。日本史上でチーズの製造が確認される最古の記録が、700年(文武天皇4年)の10月に全国に使いが出され、「酥(そ)」(現在のチーズに近い発酵食品)の製造が命じられたというものであることに由来しているそうです。10月は新暦では11月に当たり、11月の中では11月11日が一番覚えやすいということから、日本輸入チーズ普及協会とチーズ普及協議会がこの日を「チーズの日」と定めました。(因みにフランスでは3月27日がチーズの日になっています。) 日本で販売されているチーズは、ミルクを熟成・発酵させて作ったナチュラルチーズと、それを加熱して熟成を止め保存性をよくしたプロセスチーズに分けられますが、種類が多いのはやはりナチュラルチーズの方です。日本では昔はプロセスチーズが主流だったと思いますが、最近では輸入食品を扱うスーパーなどでカマンベール、ブリー、ロックフォールなどの様々なナチュラルチーズを目にすることが多くなりました。フランスでは1年365日毎日違うチーズが食べられると言われるほど種類が豊富で、まさに国民的な食品になっています。ブルーチーズ(青かびチーズ)など最初は抵抗があるかもしれませんが、食べ慣れてみると結構病み付きになりますよ。皆さんもフランスの伝統的な食文化を経験する意味で、ぜひ様々なチーズを味わってみてくださいね。(2012.11.05-2012.11.09)