フランス産赤ワイン「ボジョレー・ヌーヴォー」が11月15日(木)の午前0時に解禁されました。それに先立って6日(火)に中部国際空港で税関職員の方たちが、セントレア限定ラベルのボトル約1万8000本の輸入検査を行い、その模様が報道陣にも公開されました。
ボジョレー Beaujolais というのはフランス中東部のブルゴーニュ地方の南部に位置する地域の名前(ボジョレー地区)で、ヌーヴォー nouveau は「新しい」という意味です。ボジョレー・ヌーヴォーはその名前の通り、ボジョレー地区で初出荷されるその年に収穫されたブドウから作られたワインのことです。赤かまたはロゼで、ガメイ gamay 種と呼ばれる種類のブドウから作られます。通常、フランスの赤ワインというのは秋にブドウが収穫された後、発酵および醸造を経て翌年以降に飲まれるのですが、ボジョレー・ヌーヴォーは9月の収穫からわずか2か月程度で発売されるという出来立てのワインです。マセラシオン・カルボニック Macération carbonique (日本語では「炭酸ガス浸潤法」と言います)という特殊な製法のおかげでこういうことが可能になっています。渋みが少なく口当たりも軽いので、普段ワインを飲まない方にも飲みやすくて、その年の収穫祭のような意味合いもあるため注目されます。
このボジョレーは、フランスの法律によって毎年11月の第3水曜日が解禁日とされています。ただ日付変更線の関係で、世界で最も早く解禁日が来るのが日本ですので、日本では本場フランスよりも早く飲めるのです。そのことによる一種のイベント効果も手伝って、現在では秋の風物詩の一つとしてすっかり定着しており、毎年この時期になるとデパートやスーパーなどの店先でカラフルなラベルのボトルを目にすることが多くなりました。世界的に見てもフランスからの総輸出量の中で日本への出荷量は約半分を占め、第一位となっています。また、ワンランク上の銘柄として、ボジョレー地区の中でも北部に位置する38地域の村に限定された「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」というワインもあって、こちらも人気があるようです。
なお、業者の販売戦略であろうと思われますが、「今年はここ数年で一番出来がよい」「この10年で最高の出来」「50年に1度の出来」「100年に1度の出来」といった似たような触れ込みを毎年毎年繰り返しています。
ただそれにしても、今年は原料となるボジョレー地方のブドウの不作のために生産量がかなり減少しました。最大の原因は天候不順で、春が寒く初夏に雨が多かったために、ヨーロッパ全体としてもここ50年来のブドウの不作に見舞われ、上述のガメイ種の収穫量も最盛期の9月下旬でさえ例年の半分以下だったそうです。ただブドウそのものはよく熟したそうで、ワインの味についてはより凝縮されたよい品質になるとのことです。そのため、一時は数量不足や価格の上昇が懸念されましたが、それでもサントリー、アサヒビール、メルシャンといった日本の小売り大手は十分な数量を揃えて商戦に備えました。お値段はフルボトル(750ml)1000円台~3000円台とお手頃で、ディスカウントストアのドン・キホーテではフルボトル「490円」という超低価格を実現しているそうです。
さて、数年前までは、名古屋駅に隣接する「ホテルアソシア名古屋ターミナル」で毎年解禁日にヌーヴォー・オープンパーティーが開催され、午前0時の瞬間に抜栓して乾杯セレモニーを行い、皆でボジョレーを楽しむ機会があったのですが、ホテル自体の営業終了とともに取りやめとなり、それ以後この地方ではこれに類する解禁日深夜のパーティーは行われていないようでとても残念です。ただ、それでもやはりこの時期はあちこちのレストランや居酒屋などで、ボジョレーに関連するイベントが目白押しです。また最近では、ご自宅で楽しまれる方たちのために、ボジョレーに合うお料理のレシピも様々なものがインターネット上で紹介されているようです。皆さんも成人になられたら、ぜひ秋の夜長をゆったり過ごしながら、ボジョレーを堪能してみてくださいね。(2012.11.12-2012.11.16)