フランス語のすすめ

野水 勉 (工学、名古屋大学留学生センター教授、〔兼担〕大学院工学研究科マテリアル理工学専攻) (元の記事はこちら

私は、中学・高校時代から化学が好きでクラブ活動をやっていましたが、大学でもその分野に進みたいと理系の道を選択し、大学で化学分野の研究教育に携わっています。化学分野はドイツが伝統的に強かったため、大学入学時の第二外国語の選択においてドイツ語を選択することが一般的だったかもしれません。しかし、高校時代に洋画ファンとなり、種々の映画をみる中で、クロード・ルルーシュ監督の一連のフランス映画やフランシス・レイやミッシェル・ルグランの映画音楽に大変に魅せられました。とくに、ミッシェル・ルグランがすべてのセリフにメロディーをつけた「シェルブールの雨傘」の感動は忘れられません。影響を大いに受け、フランス語の歌を是非歌ってみたいという思いもあり、フランス語を選択しました。

学部1~2年生時代、それほど熱心にフランス語を習得したわけではありませんでしたが、基本的な文法や語彙を習得し、専門用語になってくると英語との共通性が増していくため、辞書なしでも大雑把に概略がわかるようになったことは、その後大いに役立ちました。

分析化学関係の研究を始めた70年代後半から自分の研究のために海外の研究論文をいろいろ読んできましたが、ドイツで発刊されている研究雑誌も、掲載されている論文は当時からほとんどが英語論文で、ドイツ語にしておけば良かったと思う経験はとても少なかったように思います。むしろ、時折フランス語論文に遭遇し、何とか訳して読み込むことの方が多かったかもしれません。

大学の修士課程を修了して、5年間ほど原子力関係に身を置きましたが、私の携わった使用済燃料再処理の分野ではフランスが一番先を進んでおり、研究協力のために訪問し、先端分野を吸収する機会もあり、フランス語を多少習得していたことが大いに役立ちました。

工業力や経済力においてドイツの存在は大変重要ですが、EUをはじめ、ヨーロッパの政治・経済や国を越えた巨大産業は何と言ってもフランスを中心に動いています。航空分野はフランスが間違いなく中心でしょう。

15年ほど前から、大学での国際交流・留学生交流に関わり、年毎にフランスの大学との交流が増えてきており、何度か訪問しておりますが、文化的遺産や芸術、デザインのセンス、食文化、独特の個性に大変魅了されます。今になって後悔しているのは、会話力(聞く力と話す力)をもっと熱心に取り組むべきだったことです。フランス語によるコミュニケーション力をつけておけば、世界がもっと拡がっただろうとしきりに思います。理系でもフランス語を習得することを強くお奨めします。

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