DELF/DALFと仏検の2013年春季試験

DELF/DALFの2013年春季試験の出願締め切りが4月6日に迫っています。
http://www.delfdalf.jp/calendrier_jp.htm

また、今年度よりフランス政府給費留学生試験にTCFあるいはDELF/DALFの資格取得(最低B2)が必要となるとのことです。詳しくは日本フランス語フランス文学会ホームページ
http://www.sjllf.org/
の「学会からのお知らせ」欄をご覧下さい。

一方、2013年度春季仏検は4月1日から申込受付開始のようです。
http://apefdapf.org/

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単数形の数学

川平友規(数学、名古屋大学大学院多元数理科学研究科准教授)(元の記事はこちら

フランス語で「数学」を意味する単語は mathématique ですが、通常使われるときは複数形で(冠詞もつけて) les mathématiques といいます。この用法の歴史は古くアリストテレスにまで遡るといわれており、以来習慣的に、数学は複数形ということになっているのだそうです。ちなみにお隣の物理学や化学は la physique、la chimie で単数扱いですから、ちょっと変わった感じがします。

なにか複数のものが寄せ集まって、「数学」という束ができあがっている。この「複数形の数学」という感覚は、20世紀の始めごろから現実になりつつありました。学問として成熟した数学は多くの分野に分かれてしまい、よほどの天才でなければその全貌を把握することは困難、という時代に突入したのです。

そうした中、1939年、ニコラ・ブルバキ (Nicolas Bourbaki)という数学者が突如として現れ、フランス語で『数学原論』とよばれる教科書シリーズをつぎつぎに世に送りはじめました。その原題は “Éléments de mathématique” で、”Éléments de mathématiques”(数学の部分が複数形、習慣的にはこちらが正しい)ではありません。かつて『数理科学は分かつことの出来ないひとつの有機体である』と述べたのはドイツの大数学者ヒルベルト(1901年)ですが、その精神を受けついだこのブルバキという人物は、『数学原論』という連作を通して数学の「統一化」を目指したのです。たとえば数学の核となる、概念や記号の統一。本の書き方も、「一般から特殊へ」というスローガンのもと、きわめて抽象的な枠組みからスタートしていき、具体例として今日までの数学が浮かび上がる、という構成をとりました。そのスタイルはブルバキズム(Bourbakism)という言葉とともに数学の世界を席巻しましたが、結果的に、彼のもくろみは成功には至りませんでした。数学の成長速度は著しく、「一般」や「特殊」といった概念すら安定したものではなかったのです。ブルバキはある時点から『数学原論』の執筆をやめ、シリーズは未完のまま長い沈黙状態にあります。数学もまた21世紀に入り、枝葉を増やし多彩な花を咲かせ、ふたたび複数形に戻ったかのようです。

ニコラ・ブルバキは数学を単数形とみなしましたが、じつは面白いことに、ブルバキ自身が単数形ではありませんでした。フランスの、ある若く優秀な数学者グループが用いる共通のペンネーム。それがブルバキの正体だったのです。この事実は1950年代ごろにはすでに公然の秘密であり、実働メンバーこそ明かされないものの、過去のメンバーは錚々たるもので、フランス数学界のエリート中のエリートばかりだったようです。

フランスの数学者の友人に、いまブルバキはどうなっているのか、と聞いたことがあります。「さあよくわからないけど、誰々がブルバキのカルト・ブルー(carte bleue、銀行のキャッシュカード)を持ってるはずだよ」と、冗談交じりの答えが返ってきましたが、たしかに著書『数学原論』の印税は相当なもので、ブルバキのメンバーが集まるときは渡航費も滞在費もすべてこの印税でまかなわれていた、と伝えられています。しかし本がアップデートされなくなった現在、銀行口座の残金はいかがなものでしょうか。

さて私が実際に会ったことのある旧ブルバキのメンバーに、アドゥリアン・ドゥアディ (Adrian Douady) という人物がいました。彼は「フランスで英語の講演をするのは犯罪」と言うほどの「愛 国語」主義者で、パリで行われたワークショップでは、参加者相手に「フランス語で詩を読む会」なるものを主催していました。背伸びをして輪に加わった私も、他の外国人参加者と一緒に彼の後についてボードレールを読み上げたはずなのですが、内容はすっかり忘れてしまいました。あのときはドゥアディの作り出すすばらしい数学の世界と、ボードレールの詩になにか奥ゆかしいつながりがあるのではないか、などと期待をしていたような気もします。

拙稿『フランス語で数学を』* でも述べましたが、英語隆盛のこの時代、フランスだけはいまだに自国語で論文を書くことを許容するムードが残っています。フランス数学のレベルの高さゆえではありますが、ドゥアディのような優秀かつ「愛 国語」主義的人物に支えられているところも多いのではないでしょうか。

参考までに述べておきますと、「数学のノーベル賞」ともいわれるフィールズ賞の国籍別受賞者数は、アメリカの13名についでフランスが2位の11名。ちなみに日本は5位で3名。人口あたりの受賞者数でいうと、フランスと、同じく仏語圏のベルギーが突出して高いのです。伝統あるエリート教育がその秘訣のようですが、私には彼らの話すフランス語が、人と数学を結ぶ魔法の言語のように思われるときがあるのです。

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国際シンポジウム : マイノリティ状況と共生言説Ⅲ

国際シンポジウム
マイノリティ状況と共生言説Ⅲ

2013年3月11日(月)13:00-17:30
名古屋大学文系総合館7階カンファレンスホール

13:00-13:30 田所光男(名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授)
「〈時間的マイノリティ〉に基づく新旧関係論の可能性」
13:30-14:00 加野泉(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程)
「就学前教育政策に見る共生言説」
14:00-14:30 張雅婷(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程)
「リービ英雄『国民のうた』にみる知的障害者表象-家族関係の変化に着目して-」
14:40-15:40 ハスエリドン(内モンゴル大学准教授)【招待講演】
「中国における民族教育の行方-少数民族に対するバイリンガル教育政策の理念と実践をめぐって-」
15:50-16:50 マルク・コベール(パリ13大学准教授)【招待講演】
“Les surréalistes :une action minoritaire dans un monde globalisé”
1700-1730 討議

2011年3月12日(火)13:00-17:30
13:00-13:30 イザベル・ビロドー(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士後期課程)
「文芸書籍における「訳者あとがき」の存在意義-標本調査から見える訳者後書きの役割-」
13:30-14:00 高峡(日本学術振興会特別研究員)
「「無法松」への想像力-小説『富島松五郎伝』および映画「無法松の一生」を中心に」
14:00-14:30 柴田哲雄(愛知学院大学准教授)
「国家的危機における優生学-永井潜と潘光旦」
14:40-15:40 ウォン・ガンリン(マラヤ大学上級講師)【招待講演】
“Malaysian Indians’ Identity”
15:50-16:50 アンヌ・ラリュ(パリ13大学教授)【招待講演】
“La « liste H » : Donna Haraway et la littérature d’anticipation politique”
17:00-17:30 討議

一般来聴歓迎
フランス語講演は翻訳あり
主催:日本学術振興会・科学研究費補助金基盤研究(B)
「20世紀のおける多様なマイノリティ状況の解明と共生言説の検討」
連絡先:田所光男(tadokoro@cc.nagoya-u.ac.jp)

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Teaching Assistant経験者から(S.アンプターズ=コロン)

授業を終えて思うこと
セバスティアン・アンプターズ=コロン Sébastien Emptaz-Collomb (元の記事はこちら

私が日本に住み、名古屋大学に通うようになってまもなく3年になります。この文章を書きながら、このような少しの言葉で私の感情を表すのは難しいと感じます。私が当地でした経験は豊かなものだった、と言うのではとても現実を表せません。経験は私がフランスを出発する前に得られるとは考えなかったほど多くのものをもたらしてくれたのです。
ではキャンパスについて話しましょう。自分の時間のおよそ半分をここで過ごしているのですから。私がかつて学んだグルノーブル大学のキャンパスとは全く違っています。グルノーブル大学では建物を互いに隔てる広い緑地があり、晴れた日には学生たちは日の光を満喫するために好んで寝そべっています。名古屋大学では隔たりはもっと小さく、建物ももっと小さいです。しかしそれでも、そこでの生活はやはり刺激的で心を満たしてくれます。
私は幸運にもフランス語の授業のアシスタントを務めました。今日はその最後の授業でした。きっと懐かしい思い出になるでしょう。私は自分の修士論文の執筆に戻らなくてはなりません。才気あふれる若い学生たちがフランス語の発音や文法に立ち向かうのを目にした、月曜午前のこの教室での一時間半は心地よい時間でした。毎週とても忙しく過ごす中での穏やかな間奏曲でした。 [奥田] 先生は事前の予告なしに私にクリスマスの歌を歌うように頼んできたんですよ! 今でも思い出します。私に頼むときに先生がうっすら浮かべた笑み。先生がいつもの「それでは皆さん、彼が読みますから、後から反復して下さい」を「それでは皆さん、彼が歌いますから、後から反復して下さい」に変えた時の学生たちの笑い。なんていたずら好きなんでしょう!
私はこの経験ができたことをとても感謝していますし、来年はもうできないことが残念です。(2013年1月28日)

Pensées de fin de semester
Cela va faire bientôt 3 ans que j’habite au Japon et que je fréquente l’Université de Nagoya. A l’heure où j’écris ces lignes, il m’est difficile de traduire mes émotions en si peu de mots. Dire que l’expérience que j’ai vécue ici fut enrichissante serait très en dessous de la réalité, tant elle m’a apporté que je n’aurais espéré trouver avant mon départ de France. Parlons donc du campus, puisque j’y passe environ la moitié de mon temps. Il est très différent de celui de l’université de Grenoble où j’ai étudié par le passé, où les batiments sont séparés de larges espaces verts, où les étudiants aiment s’allonger pour profiter du soleil lors des beaux jours. Ici, les distances sont plus courtes, les batiments plus petits, mais la vie y est au moins aussi stimulante et enrichissante. J’ai eu la chance d’être assistant pour un cours de français, et aujourd’hui fut le dernier cours, eh bien ça va me manquer ! Je vais devoir retourner à l’écriture de mon mémoire, et cette heure et demie passée le lundi matin dans cette salle de classe, à voir les esprits de jeunes étudiants se confronter à la prononciation et à la grammaire française fut un agréable moment, un interlude paisible dans mes semaines si occupées. Et dire que le professeur [M. Okuda] m’a demandé de chanter une chanson de Noël, sans me prévenir en avance ! Je me souviens de son petit sourire en coin lorsqu’il me l’a demandé, et les rires des étudiants lorsqu’il a changé sa traditionnelle «Bien, tout le monde, il va lire et ensuite vous répétez s’il vous plaît !» en «Bien, tout le monde, il va chanter et ensuite vous répétez s’il vous plaît ». Quel farceur ! Je suis très reconnaissant pour cette expérience et regrette de ne pas pouvoir recommencer l’année prochaine. (28 janvier 2013)

セバスティアン・アンプターズ=コロン
1979年、ヴォワロン(Voiron)〔フランス、ローヌ=アルプ地域圏、イゼール県〕に生まれる
2006-2010年、グルノーブル大学で英語と日本語を学ぶ
2009-2010年、名古屋大学NUPACE留学生
2010-2013年、名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士前期課程在籍。ウォルト・ディズニーの歌の歌詞がフランス語と日本語に訳される中で新しい意味が生み出される過程を研究している
2012年度後期初級フランス語でティーチング・アシスタントを務めた

(翻訳: 飯野)

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Teaching Assistant経験者から(P.フェラーリ)

私の日本, ポーリーヌ・フェラーリ Pauline Ferrari (元の記事はこちら

マンガや音楽、アニメやファッション、ビデオゲームとドラマ、私は最初これらによって日本に引かれました。しかし、名古屋にやって来てそれよりずっと多くのものを見つけました。人々は温かく開かれた精神を持ち、親切で礼儀正しく、相手を尊重し変わらぬやさしさを具えていました。仕事ぶりは有能で、ものは日常生活が楽になるよう考えられ、日用品は自由に手に入ります。こうした点やほかの多くの点で日本は最も優れた国の一つです。もちろん日本も完璧からは遠いです。でも、私の一番気に入っている国、私の心が選んだ国です。私は、日本にとどまれるよう、私に与えられたこの幸運、私のパラダイスで生きられるこの幸運を活用できるよう努力したいと思います。(2013年2月3日)

Mon Japon
Manga et musique, anime et mode, jeux vidéo et drama, c’est ce qui m’a attiré au Japon la première fois. Mais en arrivant à Nagoya, j’ai trouvé bien plus que cela. Des gens chaleureux et ouvert d’esprit, serviables et polis, respectueux et d’une gentillesse à toute épreuve. Des services compétents, des objets pensés pour faciliter le quotidien, une disponibilité quotidienne, tout ces aspects et tant d’autres font du Japon un pays des plus appréciables. Certes, le Japon est loin d’être parfait, mais c’est le pays qui me convient le mieux et que mon cœur a choisi, et je ferais tout pour y rester et profiter de cette chance qui m’a été donnée, celle de pouvoir vivre dans mon paradis. (3 février 2013)

ポーリーヌ・フェラーリ
1989年、パリに生まれる
2007-2010年、グルノーブル大学で商学、経済学を学ぶ
2011-2013年、名古屋大学大学院経済学研究科博士前期課程在籍。日本音楽のマーケティングについて研究している
2012年度後期初級フランス語でティーチング・アシスタントを務めた

(翻訳: 飯野)

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Academic Writingシンポジウム

2月16日土曜日にアカデミックライティングのシンポジウムが行われます。
フランス語セッションでは、大阪府立大学の高垣由美先生をお招きします。
周りの先生方、学生、留学生にぜひお知らせくださいますようお願いいたします。
当日、英語、ドイツ語などもセッションを行いますが、フランス語セッションのみ
場所と時間などを下記に示しておきます。

よろしくお願いします。
ボーメール

—–

1st International Symposium on Academic Writing and Critical Thinking
16th February, 2013 Nagoya University
Location: Bunkei Sogo-kan (文系総合館) 6-7/F

Programme de la session en français
(salle 609, Bunkei Sogo-kan 6F)

14:00 ~14:25 : L’enseignement de l’écriture à buts académiques : entre logique, culture et maîtrise de la langue
「アカデミックの目的でのライティング教育-論理、文化、語学習得を通して-」 Nicolas Baumert -
Université de Nagoya 名古屋大学

14:30 ~14:55 : Les différences dans l’organisation des érits academiques entre le français et le japonais
「フランス語と日本語のアカデミックな文章の構成上の違い」
YumiTakagaki 高垣由美 - Université Préfectorale d’Osaka大阪府立大学

15:00 ~ 15:30: Discussion

http://www.ilas.nagoya-u.ac.jp/AWU/Mei-Writing/AWCT_2013.html
Contact: awct2013@ilas.nagoya-u.ac.jp

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Kindleとフランス語電子書籍

日本のAmazonでKindleのe-bookが買えるようになったことが話題になっていますが、フランス語のテキストも、20000冊以上の在庫があり、とても安い価格で買えます。びっくりです。

無料の本

人気順

フランス文学の大古典は無料でずらっと並んでいますし、果ては日本語からフランス語に翻訳された漫画なども200円とかで買うことができます。なにしろ20000冊もあるので紹介しきれません。フランス語の本に関して、Amazon.comの在庫とAmazon.co.jpの在庫は同一と思われます。Amazon.frにはより多くの在庫がありますが、日本にいる限りAmazon.frからは購入できないように設定されています。著作権に関係した問題なのだろうと思います。

Kindle本体を持っていなくても、スマホやタブレット用の無料のアプリをダウンロードでき、それを使って読むことができます。コンピュータ用アプリもありますが、現在のところ、Amazon.co.jpで購入したe-bookをコンピュータ用のアプリで読むことはできません。Amazon.comから購入すればコンピュータで読むことができます。

Amazon.comでは日本語の本の在庫が限られるので、コンピュータはあきらめ、Kindle本体を入手するか、スマホなどで読むことにして、Amazon.co.jpから日本語、フランス語、英語などの本を買うのが現実的な選択かと思います。

 

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フランス ストラスブール大学と街並み

フランス ストラスブール大学と街並み

 名古屋大学では、フランスにおける学術交流協定校の一つであるストラスブール大学の協力を得て、2014年3月に約2週間のフランス語研修を計画しています。ストラスブールはフランス東部の中心都市であり、ドイツ国境近くの古く美しい町で す。その旧市街は世界遺産に登録され、欧州議会の本会議場(上の写真)が置かれていることでも知られます。
研修では、授業に出席してフランス語のコミュニケーション能力の向上を図るとともに、街や近郊に出かけたり、現地で学生と交流したりして国際感覚を養うこ とも目指します。計画がさらに具体化しましたら、このホームページでもご紹介します(ページ右側の「カテゴリー」欄から「語学研修」の項目を選択して下さ い)。
以下では、一足早く写真でストラスブール散策をお楽しみ下さい。

こちらではより大きな写真で見ることができます)

ストラスブール大学CAMPUS

kjgkf

 IIEF(フランス語学校)本館 http://iief.unistra.fr/

ストラスブール日仏大学会館

http://mufrancejapon.u-strasbg.fr/index.php?lang=ja

ストラスブール市内 (ラ・プチット・フランス)

ストラスブール市内 (木骨造の家)

ストラスブールのノートルダム大聖堂

 

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アドベント Avent

「アドベント」 Avent というのはキリスト教でイエス・キリストの誕生を待つ期間のことです。日本語では「待降節(たいこうせつ)」とか「降臨節(こうりんせつ)」と呼ばれます。正確には、フランスを含めた西側の教会では、11月30日に最も近い日曜日(11月27日~12月3日の間の日曜日)(今年は12月2日)からクリスマスイブまでの約4週間と決められています。

この時期にはフランスのお店ではアドベントカードというものが売られます。これはカレンダーの形になっていて、アドベントの期間中にカードに作られた窓を毎日一つずつ開けていくというものです。そして、全部の窓を開け終わったとき、クリスマスを迎えたことを教えてくれるという仕掛けになっています。

また、このアドベントの頃になると、フランスでは様々なクリスマスの飾り付けが始まります。フランスではクリスマスの飾り付けに欠かせないものとして、クリスマスツリーの他にクリスマスリースとクレッシュがあります。クリスマスリースと言うと、日本では玄関のドアにかけるものをイメージされる方が多いかもしれませんね。こういったものはフランスでは couronne de Noël (クリスマスの冠) と呼ばれていて、それもよく見かけるのですが、それ以外に特にフランス北部には couronne de l’Avent (アドベントの冠) と呼ばれるものもあって、これは天井から吊るしたり、テーブルや家具の上に置いたりするのが伝統的な形になっています。そこにロウソクを4本立てて、日曜日ごとに1本ずつ火を灯していって、4週間後にクリスマスを迎えるというわけです。(正式には、一番初めの日曜日には1本のロウソクに火をつけて、しばらくしたらその火は消し、次の日曜日には一度燃やしたロウソクと2本目のロウソクにも火をつけるというふうにして、クリスマスには4本とも火を灯すということになるのだそうです。) なお、クリスマスリースに立てるロウソクの色は、フランスの伝統では光と火を象徴する赤が一般的です。

一方、クレッシュ crèche というのは、人形などを使ってイエス・キリストが誕生した場面を再現した模型のことです。クリスマスの時期のフランスでは、教会の中や街角に設置されたクレッシュを目にすることがよくあります。また、自宅で飾るためのセットもお店で売られています。名大の近隣では、南山大学構内の図書館前の花壇を挟んだメインストリート沿いに、ほぼ等身大の人形を使った大変立派なクレッシュが飾られています。(その傍らの解説によれば、イタリア語では「プレゼピオ」 presepio と言うそうです。)

私の家でも、先週末5歳になる娘と一緒にささやかなクリスマスツリーを飾って、クリスマスを迎える準備をしました。外は吐く息が白くなるほど寒いのに、誰もが不思議と暖かな思いに包まれるこの季節が私は大好きです。皆さんも大切な人とどうぞ素敵なクリスマスをお過ごしください。(2012.12.10-2012.12.14)

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『ミシュランガイド東京・横浜・湘南2013』 Guide Michelin 2013 : Tokyo et Shonan ont 15 restaurants trois étoiles

フランスのタイヤメーカーであるミシュラン社が、12月1日(土)に『ミシュランガイド東京・横浜・湘南2013』を発売しました。それに先立って、11月28日(水)には今回星を獲得したレストラン名が公表され、三つ星を獲得したレストランのオーナーやマスコットキャラクターの「ムッシュ・ビバンダム」 Monsieur Bibendum (イラストはこちらをどうぞ)がステージに登場する PR イベントが都内で開催されました。

ミシュランガイドとはミシュラン社の発行する旅行ガイドブックのことです。赤い装丁のレッド・ミシュラン Guide rouge と緑の装丁の Guide vert とがありますが、看板商品になっているのはレッド・ミシュランの方です。このレッド・ミシュランはレストランやホテルを星の数で格付けすることで有名で、「一つ星」は「そのカテゴリーで特に美味しい料理」、「二つ星」は「遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理」、「三つ星」は「そのために旅行する価値がある卓越した料理」と定義されています。一方、グリーン・ミシュランはレッド・ミシュランよりも一回り大きくて、地域の歴史や地理や名所旧跡についての詳しい解説が載っているガイドブックです。

ミシュランガイドは評価における公正・中立・客観的な立場を守るため、広告非掲載に加えて、評価対象に対しては匿名調査を基本としています。食事の代金も調査員が全額支払います。またそれとは別に、調査員が自らの身分を明かしてレストランやホテルのシェフやオーナーに関するヒアリング調査を行う「訪問調査」もあり、この両者を組み合わせて最終的な評価が行われるそうです。

日本に関するミシュランガイドが最初に出版されたのは2007年のことでした。(『ミシュランガイド東京2008』) このガイドブックはアジア初のミシュランガイドとして約30万部を売り上げ、掲載されたレストランでは発売の翌日から電話が鳴りっぱなしで、すぐに半年先まで予約でいっぱいになるなど大きな話題になりました。また、そのときに東京のレストランが獲得した星の総数が191個で、ミシュランのおひざ元パリの97個を大きく上回ったため、海外からも注目されました。その後、この「東京版」は年を追うごとに都内で調査対象地域を広げ、2010年には鎌倉地域が加わって「関東版」となり、昨年それが湘南エリアにまで拡大したのです。なお、日本に関するミシュランガイドでは、2009年から京都や大阪などを扱った「関西版」の出版も始まったほか、今春には『ミシュランガイド北海道2012特別版』も出版され、来春には『ミシュランガイド広島2013特別版』の出版も予定されています。今後「東海版」が出版されるかどうかは分かりませんが、少し期待したいと思います。

さて、今回の『ミシュランガイド東京・横浜・湘南2013』では全部で242店のレストランが星を獲得し、三つ星を獲得した都内の店数は昨年より2店減って14店となったものの、その数は一昨年、昨年に続いて世界最多でした。また、三つ星を獲得した15店(湘南の1店を含めて)の内訳は13店が和食、2店がフレンチというものでした。今回の嬉しい変化は、一人当たり5,000円以下でランチやディナーが楽しめる星つきレストランを示すシンボルマーク(コインマーク)の付いたお店が4割以上に増えたことと、世界ではじめて韓国料理のお店が登場したことだそうです。(二つ星が1店と一つ星が2店の計3店です。) お値段は1冊2,520円ですが、旅行ガイドブックにしては少しお高めでしょうか。

私の数少ない趣味の一つは妻との食べ歩きで、美味しいレストランの情報を集めてはあちこち開拓するのが好きです。ただ、今回のミシュランガイドの中身を見る限り、三つ星のレストランはほとんどが都内の麻布や六本木といった高級オフィス街や高級セレブ街に集中していて、薄給の大学教員にはどうにも手の届かない世界のようですので、当面はインターネットのグルメサイトやグルメ雑誌で紹介されているリーズナブルなお値段のお店で存分に楽しもうかと思っています。(2012.12.03-2012.12.07)

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