全仏オープンテニス 2013 Roland-Garros 2013

全仏オープンテニスが5月26日(日)から6月9日(日)まで、フランスのローラン・ギャロス スタジアム(Stade Roland-Garros)にて開催されています。(このスタジアムは、パリの西の郊外に位置する「ブーローニュの森(Bois de Boulogne)」の隣にあります。) この全仏オープンはこのスタジアムで毎年5月末から6月初めにかけて行われ、全豪オープン(1月後半)、ウィンブルドン(6月最終(もしくはその前週の)月曜日から2週間)、全米オープン(8月の最終月曜日から2週間)と合わせて、テニスの世界4大大会(グランドスラム)の一つに数えられています。この世界4大大会を1年のうちに全て制覇することを「年間グランドスラム」と呼び、2年以上かけて全て制覇することを「生涯グランドスラム」と呼びます。

この全仏オープンは、世界4大大会の中でも最もおしゃれな雰囲気が漂う大会で、ボールボーイやアンパイア(審判)の服装、さらに観客の装いまでフランスならではのエスプリがいたるところにきいています。また、この全仏オープンは4大大会で唯一、クレー(赤土=レンガの粉)コートを利用することでも知られており、目に鮮やかな赤色のアンツーカ(en-tout-cas)と呼ばれるコートで、色とりどりのテニスウェアをまとった選手たちが熱戦を繰り広げます。毎年の大会は展開が波乱に富んでいて、上位シード選手の早期敗退が多いことから「赤土には気まぐれな神が棲んでいる」と評されることも多いです。技術だけでなく、強い精神力が勝敗を左右する、最も過酷なトーナメントとも言われる大会です。

この全仏オープンの男子シングルスでは、2010年から2012年まで3年連続で、ラファエル・ナダル選手(スペイン)という方がチャンピオンになっておられまして、今回はこの方の4連覇がかかっています。この方は2005年から2007年にかけてクレーコート81連勝という全仏オープンでの最多記録を達成され、土の王者の異名を取っておられる方です。ただ、昨年のウィンブルドンの2回戦で敗れた後、ひざの怪我が悪化して約7カ月にわたって試合を離れておられたのですが、今年の2月に復帰されて、4月からは得意のクレーコートでの試合で3連勝中です。

一方、女子シングルスで注目されているのは、昨年全仏オープンで初優勝されたマリア・シャラポア(ロシア)という選手です。この方は17歳でウィンブルドン初制覇後、18歳で世界1位に上り詰め、19歳で全米を制し、20歳で全豪でも優勝されたのですが、この全仏だけは鬼門でどうしても最後まで勝ち残ることが出来ずにおられました。しかし25歳の昨年、ついにその悪しきジンクスを跳ね返して全仏でも頂点に立たれ、見事生涯グランドスラムを達成されたのです。今回はこの方のタイトル防衛がかかっています。この方は昨年7月のロンドン五輪では銀メダルを獲得され、閉会式ではロシア選手団の旗手を務められましたので、その映像をご覧になった方もおられるでしょう。

さて日本からは、男子シングルスには錦織圭、添田豪、女子シングルスにはクルム伊達公子、森田あゆみ、土居美咲という全部で5名の選手が出場されていましたが、添田選手、クルム伊達選手、森田選手、土居選手は残念ながら皆1回戦で敗退してしまいました。しかし錦織選手は健闘目覚ましく、この文章を書いている6月2日(日)現在で、日本男子では75年ぶりに男子シングルスの3回戦を突破され、4回戦に進出、16強に入られたというニュースがテレビや新聞を賑わせております。日本でこの全仏オープンは、毎年序盤こそ華々しくマスコミで取り上げられるものの、日本選手が次々と敗退していくにつれ次第に話題にされなくなり、最終日に新聞の片隅に結果だけが小さく掲載されるというパターンが多く、いつも複雑な思いで見ております。今年も最終日まで残すところあと1週間となりましたが、錦織選手にはぜひ1試合でも多く勝ち進んでいただきたいと思っています。

全仏オープンテニス 2013の公式サイト(フランス語)はこちらをどうぞ。

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サークル紹介:「言語のランチ」

昨年度まで活動していた「フランス語で話す会」は現在は活動を休止しています。その代わりというわけではありませんが「言語のランチ」という会があります。これは日本人学生と留学生が日本語や英語やその他のしゃべりたい言語を練習しながらお昼を食べる会です。
フランス語をしゃべる留学生がたくさん居ますので、フランス語で会話することに興味がある人は来てみて下さい。新入生の参加を待っています!
金曜日のお昼に留学生センターの二階、201号室で3限前までやっています。
S.K.

(留学生センターはこちらを参照

(「フランス語を話す会」は昨年7月と8月に当ホームページで紹介しました。)

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フランスが同性婚を合法化  Législation du mariage homosexuel en France

フランスのフランソワ・オランド大統領が5月18日(土)、同性カップルによる婚姻と養子縁組を認める法案に署名し、フランスは世界で14番目、ヨーロッパでは7番目の同性婚を認める国になりました。同性婚の合法化は、昨年5月の大統領選におけるオランド氏の公約でしたが、今年の2月12日(火)に下院(国民議会)で可決され、次いで4月12日(金)には上院で、主要部分に修正を加えられることなく可決され、さらに4月23日(火)に法案の通過に必要な第2読会が上院で行われて、ようやく成立の運びとなったのです。ただ、この法案にはかねてよりカトリック教会や保守系野党の反対が根強く、賛成、反対の双方がこの数か月間にわたって激しい政治的論戦を巻き起こしていました。パリやその他の都市では反対派による大規模なデモが繰り返し行われ、デモ隊と警官隊が衝突して暴力行為に発展することもありました。また、サルコジ前大統領率いる右派・国民運動連合(UMP)はこの法案が憲法に反すると主張して違憲審査を申し立てており、これが反対派の最後の砦だったのですが、フランスの司法機関である憲法会議は5月17日(金)に同性婚は「いかなる憲法の精神にも反しない」としてこれを退ける判断を下しました。

この法案の成立を受けて、フランスの中でもリベラルな市として知られる南部のモンペリエMontpellier市では、とある青年同士のカップルが、早速意気揚々と市役所に婚姻届を提出しに行く場面がYou Tubeで配信されていました。ただ、同性婚をめぐるフランスの国論は現在もなお二分しており、5月26日(日)にはパリで再び反対派による大規模な抗議デモが予定されています。また、パリ中心部のノートル・ダム寺院では5月21日(火)に、この法案に反対する意思を表明していた男性作家が、銃で自殺するという痛ましい事件が起こり、抗議のためではないかと囁かれています。

同性婚は、ヨーロッパではカトリック教徒の多いスペイン、ポルトガル、ベルギーなどでも合法化されており、これらの国々では成立の過程で大きな混乱が起こることはありませんでした。それなのに、政教分離の原則を徹底し、寛容の精神を重んじてきたはずのフランスにおいて、何故この問題が国を二分するほど大きな騒動に発展したのでしょうか。注目すべきかと思われるのは、一連の法案反対デモにおいて、保守系野党の支持者に加えて、ごく普通の家族連れが子供を抱いたりベビーカーを押したりしながら行進する姿が見られたことです。彼らは熱心なカトリック教徒で、同性婚が「家族という概念の崩壊をもたらす」としてこの法案に反対しているのです。昨今は日本でも、女性の社会進出や父親の育児参加などによって、家庭における男女の役割が多様化してきていることが話題になりますが、おそらくそれとは全く次元の違う問題として、男女カップルと子供からなる家族構成を侵してはならない聖域として捉える意識がフランス社会には根強く存在しているのかもしれません。こうした考え方は、家族はどうあるべきかを問いかけるものとして、私たちも決して無視はできないと思います。(2013.5.20-2013.5.24)

関連記事: 同性婚合法化法案への反対デモに10万人 Plus de 100.000 personnes manifestent contre le mariage homosexuel

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カンヌ映画祭 2013 Festival de Cannes 2013

第66回カンヌ国際映画祭(公式サイト(日本語)はこちら)が5月16日(木)から26日(日)までフランス南部の都市カンヌで開かれています。カンヌというのは南フランスのコート・ダジュールにある保養地です。この映画祭はこのカンヌで毎年、フランスで最も気候のよい5月に行われます。開催期間中は、メイン会場をはじめ各映画館で映画が上映され、また併設される国際見本市では各制作会社のブースで映画のプレゼンとパーティーが行われます。この映画祭は、ベネチア国際映画祭(毎年8月末~9月初旬)、ベルリン国際映画祭(毎年2月)と併せて、世界3大映画祭の一つに数えられています。もともとは、歴史のあるベネチア国際映画祭で第2次世界大戦中に全体主義の影響が強まったために、フランスがそれに対抗して1946年に国策として始めたものです。

最高賞はトロフィーの形にちなんでパルム・ドール(Palme d’or)と呼ばれます。因みにベネチア国際映画祭の最高賞は金獅子賞(Leone d’Oro)、ベルリン国際映画祭の最高賞は金熊賞(Goldener Bär)です。毎年主要コンペティション部門に残った20本前後の映画作品の中から、このパルム・ドールをはじめ、グランプリ(Grand Prix)、監督賞、男優賞、女優賞、審査員賞などが選ばれます。また、それ以外にもいくつかの部門を持っていて、商業色は比較的薄くて個性の強い作品が並ぶ『ある視点』(Un Certain Regard)部門や、新人監督の作品を集めた『カメラ・ドール』(Caméra d’or)部門などがあります。

審査員は10名近くいて、著名な映画人や文化人によって構成されています。今年のコンペティション部門の審査員長は、『インディ・ジョーンズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』などの作品で日本でもよく知られた米国の映画監督のスティーヴン・スピルバーグさんです。また、日本にとって大変栄誉なことなのですが、今年は日本の映画監督としてはじめて河瀬直美さんが審査員に決まりました。この方は過去にカンヌ映画祭で、『萌の朱雀』(1997年)がカメラ・ドールを受賞し、『殯(もがり)の森』(2007年)がグランプリを受賞していて、カンヌとは大変縁の深い方です。審査員にはその他に、オーストラリアの女優の二コール・キッドマンさんや、台湾ご出身の映画監督のアン・リーさんなどがおられます。

今年は日本映画2作品が2年ぶりにコンペティション部門に出品されました。一つは三池崇史監督の『藁の盾(わらのたて)』という作品(公式サイトはこちら)で、10億円の懸賞金が掛けられた少女殺人犯の移送に命懸けで挑むSPたちの葛藤を描いたアクション大作です。大沢たかおさんと松嶋菜々子さんがSP役として、また藤原竜也さんが凶悪殺人犯役として出演されます。三池監督作品としては、昨年は『愛と誠』がカンヌ映画祭のミッドナイト・スクリーニング部門に出品され、一昨年は『一命』が今回と同じコンペティション部門に出品されており、いずれも残念ながら受賞は逃しましたが、この方のチャレンジ精神は素晴らしいと思います。もう一つは是枝裕和監督の『そして父になる』という作品(公式サイトはこちら)で、6歳の息子が実は出生時に取り違えられた他人の子供だったと知った主人公の葛藤を描いたヒューマン・ドラマです。福山雅治さんが5年ぶりに映画主演を果たされ、初の父親役に挑戦されました。是枝監督作品としては、2004年公開の『誰も知らない』以来およそ9年ぶり3回目のコンペティション部門出品作となります。『誰も知らない』は、当時14歳だった柳楽優弥さんが史上最年少の最優秀男優賞を受賞されたことで大きな話題になりました。今回の授賞式は26日(日)に行われますので、その時には各賞の結果がテレビや新聞を賑わすのではないでしょうか。日本の2作品の健闘にぜひ期待したいと思います。

私は過去に少数ながらカンヌ受賞作品をいくつか見たことがありますが、いずれもハラハラドキドキの手に汗握るようなストーリー展開とは程遠い、単調なまったりとした映画で、途中で思わず眠くなってしまったものもあります。でもきっと、そういった映画にこそ大人にしか解せない人生の深い味わいがあるのでしょうね。私も年齢の上ではすでに人生の後半に入っているのですが、人間的にはまだまだということなのかもしれません。人生で最も多感な時期を過ごしておられる皆さんは、ぜひ様々なジャンルの映画をご覧になって、若い感性で多くのものを吸収なさってください。(2013.5.13-2013.5.17)

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(案内) ストラスブール大学短期フランス語研修

昨年度以前にフランス語を受講した方の参加も歓迎します。以下は本年度のフランス語クラスで配布している案内です。

 

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世界オルガンの日 2013 Jour Mondial de l’Orgue 2013

パリ中心部の観光名所として知られるノートルダム大聖堂が、今年2013年に着工850周年を迎えます。そのことを祝って、昨年暮れから様々な記念行事が行われておりますが、その一環として、フランスオルガン協会が5月6日を「世界オルガンの日」に制定し、この日に世界各地の大聖堂や教会やコンサートホールなど850箇所で、24時間にわたる「世界一斉オルガンコンサート」が開催されました。

ノートルダム大聖堂が着工されたのは今から850年前の1163年のことで、この年にローマ法王アレクサンドル3世がパリ司教モリス・ド・シュッツを祝福して、聖母を祭る聖堂の建設を許したのがその起源と言われています。それ以後、何度も増築と改装が繰り返されて今日のような壮大な姿になりました。1991年には「パリのセーヌ河岸」という名称で、周辺の文化遺産とともにユネスコの世界遺産に登録され、今日では巡礼者や観光客を含めて毎年約1400万人が訪れています。

今回の着工850周年の記念行事は、昨年12月13日の盛大な式典で幕を開け、その後各種の展覧会やイベントが行われてきました。主だったものでは、今年の3月に1856年以来使われていた鐘が取り外され、18世紀末に設置されていた鐘に付け替えられて、キリスト教の「聖枝祭」にあたる3月23日にその鐘の音が始めて披露されました。5月6日の「世界一斉オルガンコンサート」は、世界一大きな楽器と言われ、宗教行事などには欠かせない文化遺産であるパイプオルガンの重要性をもっと人々に知ってもらおうとフランスオルガン協会が開催したものです。このコンサートには、フランスの主要都市やヨーロッパの国々はもちろん、南北アメリカやアフリカなど世界5大陸から43か国が参加し、時差を考慮して24時間にわたってオルガンやコーラスや楽器による演奏が行われました。そしてこの日、ノートルダム大聖堂では、夜8時半から深夜1時まで、何人ものオルガン奏者たちがパイプオルガンの演奏を披露しました。アジアからこのコンサートに参加したのは韓国と香港とフィリピンの3か国だけで、日本が参加しなかったのが大変残念です。ただ、この記念行事そのものは今年の11月24日まで続きますので、皆さんも何かの機会に目や耳にされることがあるかもしれませんね。

オルガンは、同じ鍵盤楽器でありながら、ピアノと比べてどうしても地味な印象を拭えない部分があるようですが、教会のミサなどでお腹の底に響くようなパイプオルガンの重低音を聞くと、キリスト教徒でなくても敬虔なすがすがしい気持ちに包まれるものです。あの荘厳な迫力はオルガンならではのものと言えるのではないでしょうか。長い歴史と伝統に裏打ちされたこの楽器の魅力に、私たちはもっと目を向けるべきなのかもしれません。

「世界オルガンの日」の詳細については、例えばこちらをどうぞ。(2013.5.7-2013.5.10)

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「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013」 La Folle Journée au Japon 2013

今年度初めての投稿になります。私事ながら娘がこの4月から小学1年生になり、親子共々あわただしい日々を送っているのですが、これからも皆様に楽しんでいただける内容を少しでも多くご提供できるよう頑張ります。

ゴールデン・ウィーク中の5月3日(金・祝)から5月5日(日)まで、東京で「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭 2013」という音楽の祭典が開かれます。期間中は、会場となる東京国際フォーラムと丸の内周辺エリアに世界中から多くの一流アーティストが集まり、この3日間、連日朝10時から夜11時頃まで白熱した演奏を披露します。

この音楽祭は、もともとは1995年にフランス北西部のナントNantesという港町で誕生しました。「一流の音楽を1500円~3000円という破格の低料金で楽しむことができて」しかも「一つのの演奏時間は約45分(CD1枚分くらいの長さ)と短めで」「朝から晩までコンサートをハシゴできる」といった、クラシック音楽の常識を覆すようなユニークなコンセプトに貫かれていて、これまでのクラシック音楽=敷居が高いというイメージを見事に払拭しています。良質の音楽を気軽に、マイペースで楽しめるという新しいクラシック音楽の祭典です。

東京では2005年に第1回が行われ、今年は第9回になります。東京では2007年に来場者数が100万人を超え、2012年までに延べ526万人の来場者数を記録して、今日では世界最大級の音楽祭に成長しました。さらに日本では、2009年に金沢、2010年に新潟と滋賀(びわ湖ホール)、2011年には佐賀県の鳥栖(とす)でも開催されて、いずれも大成功を収めています。

この音楽祭では毎年テーマが設けられていて、2013年の東京、金沢、滋賀のテーマは「パリ 至福の時」に決定しました。東京のラ・フォル・ジュルネでフランスの作曲家たちが紹介されるのは実は今回が初めてで、日本ではかつてない規模のフランス音楽の祭典になりそうです。ビゼーからドビュッシー、ラヴェル、サティを経てブーレーズに至る、19世紀後半から現在までのフランスの作曲家たちに、20世紀初頭にパリで活動したスペインの作曲家たちも加わって、この150年間にパリを彩った音楽のパノラマが繰り広げられます。なお「至福の時」 L’heure exquise という言葉は、19世紀後半のパリを代表する詩人ポール・ヴェルレーヌPaul Verlaine の「白い月」La lune blanche という詩の一節から採られています。

公演数は約300もあるので、楽しみ方もいろいろあります。例えば(1)メジャーな曲からほとんど演奏されない珍しい曲まで、とにかくたくさんの曲を聴く、(2)同じ曲を違う演奏家で聴き比べする、(3)同じ曲を違う編成や違う楽器で聴く、などです。また「0歳からのコンサート」というイベントがあって、このラ・フォル・ジュルネ音楽祭の一つの名物になっています。ほとんどのコンサートは「3歳未満の入場不可」となっているのですが、この「0歳からのコンサート」だけは文字通り「0歳より入場可」となっています。これは、小さな子供にも子供向けでない本格的なコンサートを楽しんでもらって、音楽を愛する大人に成長してもらいたいという願いを込めて開催されているものです。そしてこのコンサートでは、たとえ子供が演奏中に泣いたり騒いだりしても、指揮者も演奏家たちも聴衆もそれを寛大な心で温かく受け入れるということになっています。そのため、赤ちゃんを連れたお母さんたちに大人気で、毎年会場前にはベビーカーがずらりと並びます。

この音楽祭はゴールデン・ウィーク・シーズンの東京の新たな風物詩となっていて、今年は約48万人の来場者数が見込まれています。ですので、名古屋からは少し遠いかもしれませんが、ご関心のある方はぜひお出かけになってみてはいかがでしょうか。

「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013」の公式サイトはこちらをどうぞ。(2013.4.30-2013.5.2)

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フランス語のすすめ

木俣元一(美術史、名古屋大学大学院文学研究科教授)(元の記事はこちら

実用と関係なくフランス語と付き合う
私がまだ学部の学生だった頃に、九州大学から日本の仏教美術史を研究している先生が、非常勤講師として名大へ教えに来られたことがある。その先生が講義の合間にしてくださったお話しのなかで、今でもよく覚えているのは、「ぼくは毎日フランス語を読んでいるんだ」と言われてびっくりしたことだ。日本の仏教美術とフランス語がうまい具合に結びつかなかったからである。もうひとつびっくりしたのは、「なぜ読むかというとだね、それは、頭の訓練になるからだよ」と言われたことで、研究上の必要性からフランス語を読むのではなく、論理的思考力を鍛えるためにフランス語を毎日読んでいるそうなのである。今このことを思いだしながら感じるのは、なんて贅沢なことなんだろう、ということだ。学んだ外国語を実際に使うのも楽しいが、フランス語で会話をしたり、論文を書いたりしなくても、こんな付き合い方もあるのですね。

エミール・マールを読もう
エミール・マール(Emile Mâle)の名前を聞いたことがあるだろうか。19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、パリのソルボンヌ大学で中世美術史を教えていた教授で、フランス中世の図像学に関する著作がたくさん翻訳されている。私が学生だった頃、研究室にあったマールの原書がきれいなマーブル紙で装幀されていることを、当時の指導教員だった辻佐保子先生に告げたところ、「その本はきれいなだけじゃないのよ」と言われたことをよく覚えている。たしかにきれいなだけの本でないことは、少しフランス語が読めるようになった頃にマールの原書に挑戦したときによく分かった。フランス語がきわめて明快ですぐに頭に入ってくるので、どんどん読めてしまうのである。しかも、すごく面白い。プルーストが大好きだったというマールの本を、文法をある程度覚えたら、ぜひフランス語で読んでほしい。

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フランス語のすすめ

野水 勉 (工学、名古屋大学留学生センター教授、〔兼担〕大学院工学研究科マテリアル理工学専攻) (元の記事はこちら

私は、中学・高校時代から化学が好きでクラブ活動をやっていましたが、大学でもその分野に進みたいと理系の道を選択し、大学で化学分野の研究教育に携わっています。化学分野はドイツが伝統的に強かったため、大学入学時の第二外国語の選択においてドイツ語を選択することが一般的だったかもしれません。しかし、高校時代に洋画ファンとなり、種々の映画をみる中で、クロード・ルルーシュ監督の一連のフランス映画やフランシス・レイやミッシェル・ルグランの映画音楽に大変に魅せられました。とくに、ミッシェル・ルグランがすべてのセリフにメロディーをつけた「シェルブールの雨傘」の感動は忘れられません。影響を大いに受け、フランス語の歌を是非歌ってみたいという思いもあり、フランス語を選択しました。

学部1~2年生時代、それほど熱心にフランス語を習得したわけではありませんでしたが、基本的な文法や語彙を習得し、専門用語になってくると英語との共通性が増していくため、辞書なしでも大雑把に概略がわかるようになったことは、その後大いに役立ちました。

分析化学関係の研究を始めた70年代後半から自分の研究のために海外の研究論文をいろいろ読んできましたが、ドイツで発刊されている研究雑誌も、掲載されている論文は当時からほとんどが英語論文で、ドイツ語にしておけば良かったと思う経験はとても少なかったように思います。むしろ、時折フランス語論文に遭遇し、何とか訳して読み込むことの方が多かったかもしれません。

大学の修士課程を修了して、5年間ほど原子力関係に身を置きましたが、私の携わった使用済燃料再処理の分野ではフランスが一番先を進んでおり、研究協力のために訪問し、先端分野を吸収する機会もあり、フランス語を多少習得していたことが大いに役立ちました。

工業力や経済力においてドイツの存在は大変重要ですが、EUをはじめ、ヨーロッパの政治・経済や国を越えた巨大産業は何と言ってもフランスを中心に動いています。航空分野はフランスが間違いなく中心でしょう。

15年ほど前から、大学での国際交流・留学生交流に関わり、年毎にフランスの大学との交流が増えてきており、何度か訪問しておりますが、文化的遺産や芸術、デザインのセンス、食文化、独特の個性に大変魅了されます。今になって後悔しているのは、会話力(聞く力と話す力)をもっと熱心に取り組むべきだったことです。フランス語によるコミュニケーション力をつけておけば、世界がもっと拡がっただろうとしきりに思います。理系でもフランス語を習得することを強くお奨めします。

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パソコンでのフランス語の利用 (Windowsの場合)

(2013年3月31日公開 / 2016年11月30日更新)

フランス語には é, è, ê, à, ù, ç など、アルファベットに綴り字記号がついたものがあります。こうした文字をパソコンではどのように入力し、どのように利用したらいいのでしょうか。

ここでは Windows 系の日本語版パソコンで、綴り字記号のついたフランス語の文章を書いたり、その文章を電子メールで送ったりする方法を紹介します。
(Macintosh 系のパソコンにはふれていません。ご了承下さい。)

1. フランス語入力
フランス語に特有の文字を入力するための準備と入力の仕方は以下のようです。

1-1. 準備
まず準備です。Windows 10 の場合は以下のように進めます。Windows 7, Windows 8.1 の場合はこちらをご覧下さい

Windows 10 の場合
設定->時刻と言語->地域と言語->「言語」の項で「言語を追加する」をクリック->「フランス語」をクリック->「フランス語(カナダ)」をクリック
〔あるいは、コントロールパネル(スタートボタンの右クリック〔あるいは長押し〕で表示されるメニューから選択)->時計、言語および地域->言語->「言語の設定の変更」の画面で「言語の追加」をクリック->「フランス語」を選択し、「開く」をクリック->「フランス語(カナダ)」を選択し「追加」をクリック〕
なお「フランス語(カナダ)」は、日本語キーボードでのアルファベットのキー配列と共通性が高い「カナダマルチリンガル標準」というキー配列になります。

以上のように進めると、パソコン画面下のタスクバーの右の方で「日本語」と「フランス語(カナダ)」から入力方法を選択できるようになります。

1-2. 入力の実際
次は、このカナダマルチリンガル標準のキー配列を使って、フランス語に特有な個々の文字を実際に入力することになりますが、その方法については次のページを参照して下さい。
「パソコンdeフランス語」(「アクサン記号の位置(日本語106キーボード)」の項以下)(「パソコンdeフランス語」トップページはこちら
カナダフランス語(マルチリンガル標準)のキー配列(長崎外国語大学戸口民也先生ホームページ)(2016年11月28日追加。上のサイトにはない「 / (スラッシュ)」 の出し方が載っています。一方、「参考までに(アクサンやセディーユつきの文字を入力する方法)」の内容はカナダマルチリンガル標準のキーボードには該当しません。注意が必要です。)

 

2. フランス語文の作成と利用

2-1. 代表的ソフトウェアの利用
一般的には、日本語を入力する時は、上の 1-1 で見たように、パソコン画面下のタスクバーの右の方で「日本語」を選択します。フランス語を入力する時は、同様に「フランス語(カナダ)」を選択します。
その上で、代表的なソフトウェアで日本語とフランス語の混じった文章や資料を作成する仕方は以下のようです。

Microsoft Word : そのまま日本語とフランス語の混じった文章も書くことができる。フランス語の部分は、フォントも自動的に欧文フォントが選ばれるようだ。

Microsof Excel : そのまま日本語もフランス語も入力できる。ただし、フランス語の部分に欧文フォントを使いたいときは、自分でフォントを変える必要があるようだ。

メモ帳(Windows 付属のエディタ): 日本語とフランス語の混じった文章を書いたあと、「名前を付けて保存」を選択して開く保存のためのウインドウの中で、「文字コード」の欄から、Unicode か UTF-8 を選択する。

WZ エディタ
(Windows 系の代表的エディタ): 日本語とフランス語の混じった文章を書いたあと、「名前を付けて保存」を選択して開くウインドウの中で、文字コードとして UTF-8 か Unicode を選択する。あらかじめ次のように文字コードを変更しておいてもよい。表示->オプション->文字コード->UTF-8 を選択。

かつては一般に、フランス語の綴り字記号付きの文字は日本語と両立できず、文字化けが起こるなどの問題がありました。現在では、ユニコード(UTF-8など)に対応した多くのソフトで両者を両立させることができます。

2-2. 電子メールの送り方

電子メールで、綴り字記号付きのフランス語文を送りたい、あるいは、綴り字記号付きフランス語と日本語が混じった文を送りたいときは次のようにします。

1) メールソフトを利用する場合
メッセージの作成の画面で、上に見たようにフランス語と日本語の混じった文を書いて送信します(Outlook など)。ただし、メールソフトによっては、「エンコード」を「Unicode」あるいは「UTF-8」に設定しなければならないものがあります(Windows Live メールなど)。

2) Web メールを利用する場合(ブラウザを用いて電子メールを利用する場合)
Web メールを利用する場合、当該のWebメールシステムがUnicodeに対応していない場合は綴り字記号付きフランス語文の送受信はできません。(例:プロバイダ @nifty のWebメールは Unicode に設定できないようです。)
WebメールシステムがUnicode に対応している場合(名古屋大学全学メールサービスのWebメールは対応しています)は、綴り字記号付きフランス語文も、フランス語と日本語が混じった文も送受信することができます。
例えば、名大全学メールのWebメールでは、ログインした後の「個人設定」の「メールの作成」の設定画面で、「標準の文字セット」を「UTF-8 (Unicode) 」にあらかじめ設定し保存しておきます。
「メールの表示」の設定は、デフォルトの「ISO-2022-JP (日本語)」のままでも、「UTF-8 (Unicode) 」に変更しても、どちらも問題ありません。

電子メールの場合、自分のパソコンのメールソフトの画面では日本語とフランス語が両立していても、相手にそのまま届かないことがありますから要注意です(フランス語文が相手に届いた時には、綴り字記号が取れてしまっていたり、綴り字記号の付いた文字が「?」で置き換えられてしまっていたりすることがあります)。

文責: 飯野和夫(名古屋大学大学院国際言語文化研究科)

 

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